聖者よ、彼を援けたまえ

2020年12月22日火曜日

★グリフィンと欠落の姉妹編 マジカル後継者世帯

t f B! P L
こんにちはー。

本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」です。

グリフィンはまだ、長い回想のなかにあります。イナ・ポートランドの導きで、妹を医者に診せることができた少年時代のグリフィン。その甲斐あって、妹は危機を脱しました。彼は診療費の相談(支払い)のため、無免許医・フリントロックの部屋を訪ねます……

それでは、本日もまいりましょう!

(最終加筆修正:2023年10月6日)




グリフィンの姿は、スパイス・マーケットの一角にありました。

グリフィン「フリントロック先生の家は……ここだ。アパートの四階だったな」

…………。
…………。




グリフィン「…………?」




金髪の男「……ありがとう、先生。見て、傷はきれいに消えたわ。よかったら今夜、もういちど来てもいい?シャンパンと桃のケーキを持って。【とくべつな】お礼がしたいの」

フリントロック「そうしよう。八時に部屋で」

金髪の男「待っていてね。じゃあ、あとで」

グリフィン「…………」




金髪の男「あら、先生のところ?」




グリフィン「…………」




グリフィン「……失礼します」

フリントロック「来たか、時間通りだな。茶でも飲むか。ショウガの入った薬湯もある」

グリフィン「いらない。支払いの話をしにきました」

フリントロック「そうか。おまえは多少、雑談というものを覚えたほうがいい気がするが……まぁそれはただの、わたしの意見だ。すわりなさい」




グリフィン「…………」

フリントロック「そうだ、そこに掛けて」




フリントロック「そう。上を見て。顔をあげていなさい」

…………。
…………。




グリフィン「…………?」




グリフィン「――――!!




少年は、怒りにまかせて男をつきとばしました。

だが、栄養がたりず血のめぐりの悪い彼の腕力で、壁のような大男をどうにかできるというものではなかった。反動で少年自身が、椅子ごとうしろに吹きとびました。

フリントロック「危険だな、ケガをするぞ」




グリフィン「自分を売るつもりはない!!いくら恩人であっても!!

顔が青ざめ、肩がわななくほどの激昂を見せて、グリフィンは怒鳴り散らしました。

ひ弱な少年だと受けとられて、つけこまれたこと。
大男の吐息に、あまったるい香水の匂いを感じたこと。
それが、部屋のまえですれちがった【患者】の残り香であること。
むこうのテーブルに、女物の絹の手袋が残されていること。
こんな下衆な男に、妹の診察をまかせたこと。

それらの現実が混ざりあい、めまいを引きおこすほどの怒りを、グリフィンにもたらしました。

フリントロック「……悪かった。なぜわたしが破門になったのか。おまえのようなむじゃきな若者でさえ、わたしの血肉から堕落の悪臭を嗅ぎとるのだと、おまえはこの身のくだらなさを教えてくれるな。だが、おまえの揺るがぬ誇りは、おまえ自身を援(たす)けるだろう」

グリフィン「!?

フリントロック「許せ。おまえは、わたしが遊び人だと知ったのだろう。わたしは頽廃しきっていて、思わせぶりに見えるのだろう。そうだとわかっていれば、誇り高いおまえを恐れさせ、そんなに怒らせるような近づき方はしなかった。もっと注意が必要だった。わたしはただ、おまえの目を……」

グリフィン「僧侶じゃなかったのか」

グリフィンは遮るようにして、収まらない怒りをたたきつけました。




フリントロック「そうだ。かつて戒律そのものを信仰し、やがて戒律への疑念が生まれ、さいごに戒律を破り棄てた。わたしが山を追放されたのは、そのためだった。だがそれでいい。女神のほんとうの教えは、戒律とは別のところにあると知った」

グリフィン「どうでもいい。さっさと支払いの話を終わらせてくれ」

フリントロック「そうしよう。もう一度、窓辺にすわりたまえ。そこのランプもつけてくれないか。……どうも、蛍光灯の光ではよく見えない」




グリフィンは相手をにらみつけ、動こうとしませんでした。

フリントロック「すまなかった。このナイフを渡しておこう。次にわたしへの憤りを感じるようなことがあったら、これでわたしの喉を突いても構わない」

…………。
…………。




グリフィン「……いつまで、こうしてる」

グリフィンは窓辺にすわり、フリントロック医師はペンライトを手にして、グリフィンのまえに立っていました。医師はグリフィンの顔をのぞきこみ、ライトを上げたり下げたりして、グリフィンの目のあたりを照らしています。

フリントロック「しずかに。おまえの魔力を感じとり、おまえの眼球の芯を視(み)ている。真夏の空を閉じこめたような、青い瞳だ。おまえは骨の髄まで魔力に汚染されているが、やはりこの瞳だけは染まっていない。生まれたときから、この色か」

グリフィン「……憶えてないが、そうだと思う」

フリントロック「正確な答え方だな。……グリフィンよ、率直に問う。おまえははるか昔、北方の森に姿を消したという英雄ライオネル・トワイライトの一族のものではないのか」

グリフィン「…………!!




グリフィン「…………。…………。その質問に答えることはできない。おれは顔を持たない、影の存在だ」

フリントロック「質問を替えよう。おまえは【世界の生まれ変わり】について、なにか伝え聞いてはいないか」

グリフィン「…………?」




フリントロック「……いや、わかった。立ちなさい」

グリフィン「…………。報酬の話はどうした」




フリントロック「報酬はもう、受け取った。はるか昔、霧のように姿を消した一族がどう生きたのか……その真実を、わたしはきょう知ることになった。おまえ自身はなにも知らない、ということもわかった。充分だ」

フリントロック「グリフィンの名を持つ若者よ。弟妹(きょうだい)たちのところまで、気をつけて帰りなさい。いつかきっと、おまえはおまえの役目を知る。その日までは、したたかに生き延びるのだ」




その日、フリントロック医師の部屋でかわした会話のことを、グリフィンはだれにも言いませんでした。


つづきます……!


今回のポーズ

SSの3枚目(フリントロックと金髪の男)のポーズは、
よりお借りしました。いつもありがとうございます!

Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!

(その他のポーズは、自作です……)

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