約束の地に辿り着くまで

2021年4月4日日曜日

★グリフィンと欠落の姉妹編 マジカル後継者世帯

t f B! P L
こんにちはー。

遅くなってしまいました。
本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。

三歳児の姿になってしまった旧友……イナ・ポートランド。彼女は心まで喪ってしまったのか、外界からの刺激に反応しません。グリフィンは彼女との対話を試みましたが、それも失敗に終わりました。その後、彼は友人のために、どう行動したのでしょうか……

それでは、本日もまいりましょう!



ムーア「スノウフイール」

ある日の午後、グリフィンが【表の仕事】である清掃業務に打ち込んでいると、同僚がモグラのように顔を出して呼びました。


グリフィン「ムーア、勤務中だ。話ならあとにしろ」

ムーア「はっはっは。おまえは仕事中でも、おれのほうはもう上がってるってワケよ。いいだろ?……食堂に新しいメニューが入ったの、知ってる?今日から三週間は、ラザニアだよ。おまえの分、キープしといてやろうか」


グリフィン「……別にいい。食べてる時間はないと思う。勤務が明けたら、マルボロのところに行く」

ムーア「今日も【彼女】の病室へ?……こう言ったらナンだけど、あんまり思い入れ過ぎないほうがいいんじゃねぇの?」


グリフィン「思い入れてるつもりはない。普通だ」

ムーア「……そうかね。まぁいいか、おまえの人生なんだし」

グリフィン「…………」

あとは【新メニューのラザニア】に対する期待を延々と述べ……メルヴィル・ムーアは去っていきました。


…………。
…………。


マルボロ「……来たか。きみは時間に正確で助かる」


グリフィン「そうでもない。……開けてくれ」


マルボロ「注意事項だ。本日以降は、きみが入室している間の会話をすべて録音する。静画だけでは情報が足りない。わたしとしても、善意できみに協力している訳ではない」

グリフィン「構わない。IDカードを寄越してくれ」

…………。
…………。


グリフィンが病室に入っていくと、イナ・ポートランドはチラリと目を上げました。しかし心を動かされた様子はなく、また下を向いてしまいました。

グリフィン「……憶えてるかどうかはわからないが、グリフィンだ。また来た」

心持ち穏やかな声で、グリフィンはそう言いました。最初にこの病室を訪れてから一週間……彼の【挨拶】は、決まってこの言葉でした。


グリフィン「歓迎されてないのは分かってる。だが、零れ落ちていくあなたをほっておく気はない。今度こそ。……おれを邪魔に感じてるなら、噛みついてくれて構わない」

イナ「…………」


グリフィン「……今日は話題を持ってきた」

彼は、一枚の写真を取り出しました。


グリフィン「……おれの妹だ。だが、話したいのは彼女自身のことじゃない。憶えてるか。彼女の手首にあるブレスレットだ」



イナ「…………」

グリフィン「あなたがサンマイシューノを去る時、形見として、このブレスレットをおれにくれた。おれの手首には小さすぎるかもしれないから、その時は妹さんにあげてくれと言って」


グリフィン「……あなたの言った通り、あのブレスレットは、おれ自身がはめてみようとも思えないほど細かった。下手に手首に巻きつけたなら、千切れてしまいそうだった」

イナ「…………」

グリフィン「それでおれは、妹に渡した。妹は旅の途中、ろくに着飾ったことがなかったから、驚くほどに喜んでた。……彼女は今もあのブレスレットを大事にしてて、肌身離さず着けている」



イナ「…………」

グリフィン「あなたが憶えていなくても、妹はあなたを憶えてる。自分が倒れた時に助けてくれた恩人だと、何度も言ってた。おれの弟も、あなたをよく憶えてる。そして、おれ自身もーー」

マルボロ《……スノウフイール、時間だ。退室したまえ

室内のスピーカーを通して、グリフィンの上官が呼びかけました。


グリフィン「……また来る」

その日もまた、イナの瞳に感情の光が浮かぶことはありませんでした……。


つづきます!


今回お借りした、おもな小道具

SS1枚目・グリフィンが持っている「ぞうきん」は、
よりお借りしました。いつもありがとうございます。

Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!

(ポーズは、自作です……)

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