我が半身は背く

2022年1月5日水曜日

★グリフィンと欠落の姉妹編 マジカル後継者世帯

t f B! P L
こんにちはー。

お話の更新が「半月以上、間が開く」というオソロシイ事態になっておりました……(平伏)
本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。

昼と夜の裂け目のような不思議な世界から呼び戻され、再び「軍施設の庭」に帰還したイナ。くるくると転がりながら現実の世界にとびだした彼女を抱きとめたのは、グリフィンでした。今回は久しぶりにグリフィンの視点で、物語を追いかけます。

……それでは、本日もまいりましょう!



扉から吐き出されたイナをしっかりと受け止めたのは、グリフィン。

いつだってイナを助けてくれる、優しい旧友だったのでした。

グリフィン「ケガはないか」

落ち着いた声で、グリフィンはまずそれを確かめました。


イナ「えっ……グリフィ……えっ、どうして?どうして、あたしがここにいるってわかったの!?」

グリフィン「ケガがないなら、それでいい。あなたが異様な魔力に捕まったのを感じた。その匂いを追ってきたら、ここへ来た」


もし事情を知る者がこの場にいたら「グリフィンはしかつめらしく解説するより、まず自分の身をいたわったほうがいい」と言ったかもしれません。

軍の基地のド真ん中に不時着してしまってから、約十分。グリフィンはあらゆるセキュリティゲートに自分のIDカードをつっこんで、扉という扉をこじ開けて、猛然と疾走してきたのです。


彼の心臓は今、破裂しそうな速さで拍動し、肺には酸素が足りていなかった。それでも彼は、疲労などみじんも顔に出しませんでした。


グリフィン「…………。あれを開けたのは、あなたか」


濃厚な魔力を放出する扉を、彼はひたと見据えました。

イナ「え、う……そうだよ。……そうだ!グリフィン、ここにいちゃダメ!あんたは逃げて!あたし、やばい男に会ったんだ。もうひとりの自分(ドッペルゲンガー)に出会ったら存在が消えてしまうって、むかしあたしのイトコがそう言ってたんだよ!」

グリフィン「…………?あれを閉じるのが先だ」

イナ「グリフィン!」


グリフィン・トワイライトは掌に魔力を集中させ、心を鎮めました。彼の呼吸は長く深くなり、精緻な魔法を【編纂する】準備が整いました。

実のところ、イナが【開けた】この扉がどのようなモノであるのか、グリフィン自身にも掴みきれてはいませんでした。

魔界の口か、時の流れの裂け目か。


だがとにかく、イナが【開いてはならない門】を開いてしまったことは確かでした。世界のキズは、それが小さく浅いうちに修復しなければなりません。それは、魔力を持つ者の役目であり義務でした。


結論から言うと、グリフィンが扉を閉じることは出来ませんでした。


扉の向こうで何かが動く気配があり、山が重く鳴動するかのように、あの男が這い出てきたのです。

イナ「…………!!

グリフィン「…………」



謎の男「おれが誰だかわかるか」

グリフィン「…………。この施設を覆う異様な魔力の正体が何なのか、今まで見えなかった。この距離なら、手触りがわかる。おれの匂いがする。おれの血の匂い、おれの魔力と同じ腐臭。黄昏の扉から、おれのカゲが現れたように見える。おまえは、おれの敵だ

謎の男「答えはイエス、おまけにノーだ」


四半秒のズレすらなく、ふたりは同時に戦士の構えを取りました。

しかし、ふたりの判断自体は異なっていた。

グリフィンは、この得体の知れぬ男を生け捕りにしようと、魔力でもって目に見えぬ鋼鉄の網を造り上げ、蜘蛛のように投げかけました。

白いカゲのような男はみずからの魔力を切り分け、質量無き刃を形作ると、グリフィンの胸の真ん中めがけて解き放ちました。


イナ「ダメ!!!


イナは今度こそ悲鳴を上げ、グリフィンの前にとびだしました。

自分が身を投げうったことに、彼女は気づいてもいませんでした。

つづきます!


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