こんにちはー。

本日は、また「ニカラスが引越してきたお話」の続きですー。
無邪気なドレス少年・ニカラスが灯台荘にやってきた日。少年の問いに答えて、ハンナちゃんは「永らくおうちに帰ってこない妹」エヴァーブルーの物語を聴かせることにしました……!

それでは、本日もまいりましょう!



ハンナ「ブルーはねぇ、またどっかに遁走しちゃったんだよねぇ……」

ニカラス「ふうん……?」

ここに居ない妹……ハンナちゃん自身も暫くその姿を見ていないエヴァーブルー・ブレイクの話を、ハンナちゃんは語ることにしました。


ハンナ「エヴァーブルーは確かに、ブライトチェスター大学を卒業したよ?あの街で知り合ったお友達とルームシェアして、そりゃあ楽しく暮らしてたらしい」

妹がときおりメールで報告してきた彼女の日常を、ハンナちゃんは思い返していました。

ハンナ「大学の講義は顔を出したりサボったりだったらしいけど、ブルーはもともと、とても頭がよかったでしょ?だから、本気になった時は凄かったみたい。おしまいには、なにやら課程を短縮?するか何かして、あっというまに卒業しちゃったらしい。一体何をどうやったのか、あたしには見当もつかないけど。それで、学校を出たあとはパブでアルバイトしたりして、ぶらぶらしてた。……そのうち、ブルーから手紙が来たの」


ハンナ「手紙の中身は、ふた言だけ。【旅に出ます。新しい住処が決まったら、連絡する】……昔から、ひとところには居られない旅ガラスみたいな子だったから、ソニア姉さまも何も言わなかった。次の手紙は届かなくて、そのまま音信不通。ま、なにしろブルーのやることだし、そんなこともあるよね?」

あっけらかんと言うハンナちゃんに、ニカラスは目をぱちくりさせました。


ニカラス「心配しないんだね?」

ハンナ「うん。だって、ブルーはしっかり者の野ネズミみたいな女の子だから。自分で屋根を探して、食料を調達して、かならず元気にやってるよ!そしてまた、この灯台荘に帰ってくる。あの子は海を愛してて、打ち寄せる波を感じてないと干上がっちゃうようなところがあるから。……なんてったって、名前が【エヴァーブルー】だからね?」

ハンナちゃんがニヤリとしてみせたので、ニカラスは声をたてて笑いました。


ニカラス「ブルーちゃん、よく海にカヌーを浮かべて、そのうえでお昼寝してたよね?」

ハンナ「うん、そう。それである時、カンカン照りの下でぐっすり眠っちゃって、日焼けで肌がまっかっかのパリパリになっちゃった。父さまに知らせたら島姫さまの館からすっとんで帰ってきてくれて、みんなで病院に担ぎ込んだんだ」

ニカラス「会いたいな」


ハンナ「父さまのほうは、スラニにいればいつでも会える。ニカが望むなら、今夜にでも。ブルーのほうも、いつかはね。携帯電話を換えたらしくて本当に連絡がつかないから、ブルーのほうから連絡くれるのを待たなきゃいけないけど。……でも、別にいいんだ。エヴァーブルーは旅ガラスで、野ネズミで、カモメだから。野性のものを縛りつけることは、誰にもできやしないんだよ」

ニカラス「……ハンナちゃんは、凄いねぇ。灯台みたいに、みんなを待っているんだね?」

ハンナ「あはは!あたしは灯台守だからね。だからいつか、もし、世界がどんなに変わっても……」

ハンナちゃんが言い終わらないうちに、灯台荘の正面玄関にあたるガラス戸が開きました。おうちのなかから、ガレくんが出てきます。


ハンナ「あれ?ガレ、帰る?」

ガレ「はい。もう用事は済みましたから。日が暮れたら、養父と妹と一緒に、また来ます」

ハンナ「そっか。じゃ、あとでね?」

ガレ「はい。また……」

ガレくんはそこで口をつぐみ、考え込みました。それから、ニカラスにひたと目を据えて、はっきりした明るい声で言いました。


ガレ「ニカラス、また明日」

ニカラス「…………!!うん、また明日!

ボートを漕いで帰っていくガレくんが見えなくなるまで、ハンナちゃんとニカラスは黙って見送っていました。ニカラスのほっぺは、嬉しそうなピンク色になっています。


ニカラス「……よかった!ぼく、本当はちょっぴり心配してたの。初対面なのに馴れ馴れしくしすぎて、ガレくんがぼくをイヤになっちゃったんじゃないかって」

ハンナ「ガレなら大丈夫だよ。ニカはそのまんまでいいんだ」

ハンナちゃんは、確信をもって言いました。

ニカラス「……うん、ありがと。そろそろぼくも、おうちに帰ろうかな?おうちに荷物を入れて、ベッドを整えて、とりあえず今夜お部屋で眠れるようにしなきゃいけないしね?」

ハンナ「そうだね。よかったらあたし、一緒に行こうか」

ニカラス「ふふ、だいじょぶだよ?ハンナちゃん、また明日ね!」

明日もハンナちゃんに会える。ソニアお姉ちゃんに会える。ガレくんにも会える。……そう思うと、ニカラスの胸はじんわりと温かくなるのでした。

ニカラス「ハンナちゃん、ぼく、幸せだよ!


ニカラスの笑い声に、ハンナちゃんはやっぱりニヤリと笑って、親指を立ててみせました。

つづきます!


Thanks to all MOD/CC creators!

(ポーズは、自作です……)

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