ときには母親のように

2020年10月1日木曜日

★ヨルの秘密編 ヴァトーレ家 チョン家

t f B! P L
こんにちはー。

本日は、また「ヨルの秘密編」ですー。
ヴァトーレ家の客間で眠ったヨル・ヘイデン少年。長いような短いような夢のなかで、彼は子供時代に初めてリリスさんと出会った日のことを回想します。そして……

それでは、本日もまいりましょう!



ヨル・ヘイデンの夢のなかで、子供時代のヨル自身が眠りにつきました。
そして……


今、入れ替わるように現実世界のヨルが、目を醒まします……。

ヨル「……夢か。何もかも、随分昔のことに思えるな」

ヨルは首筋を触り、リリスさんに噛まれた傷跡を確かめました。それからおもむろにドアを開けて、リリス・ヴァトーレの許へ戻ってゆきました。


リリス「おはよう」

ヨルが眠りに落ちてから、あまり時間はすぎていないはずです。それでも、リリスさんはしかつめらしく、そう言いました。

ヨル「ベッドを貸してくれてありがとう。もう大丈夫。帰るね」

リリス「では、おまえに今日のブラッドの料金を。……手を出しなさい」


ヨル「……これは?」

リリス「古銭よ。暗黒時代……わたしたちヴァンパイアが地上を統治していた時代に、貴族たちが使っていた貨幣。古物商に売れば、それなりの値がつく」

ヨルは銀貨や銅貨をひっくり返したり、蝋燭の光に透かしたりしてみました。


ヨル「あなたたちは昔、この世界の王だった」

リリス「昔話は好きではない。四百五十年前、人間(シム)のなかから【魔力を秘めた男】ライオネル・トワイライトが現れて、すべては変わった。わたしたちは、長い黄昏を生きている」

ヨル「ごめんね」

リリス「…………?」


リリスさんが不思議そうに、片方の眉を上げました。

ヨル「ぼく本当は、子供の頃面倒を見てもらったお礼に、あなたに無償でブラッドを捧げなきゃいけないんだ。なのに、自分が困ってるからという理由で、あなたに見返りを求めた」

リリス「別に構わない。久しぶりに、張りのあるやり取りだった。わたしは駆け引きが好きよ」

ヨル「ありがとう。あなたは親切なヴァンパイアだ」


ヨルは、いつになく真面目に言いました。そして、少しばかり躊躇ってから、意を決して続けました。

ヨル「ねえ……もしそうしたいなら、ぼくにキスしてもいいよ。ぼくは身勝手で未熟だけど、契約を反故にしたりはしないから。ぼくがあなたの物だという証に、あなたとキスしてもいいと思ってる」


答えの代わりに、リリスさんは鼻から息を洩らしました。笑ったのです。緊張して青ざめていたヨルは、拍子抜けしたような顔をしました。

リリス「必要ない。わたしには、おまえのブラッドがある。それ以上のものを要求しない。ガールフレンドがいるんでしょう?」

ヨル「……うん」

リリス「それなら、おまえの唇はその娘(こ)の物よ。身売りする必要はない。おまえの愛の自由まで奪う気はないわ」


今度はヨルが、ほんの少し笑いました。

リリス「何」

ヨル「……いや。あなたは時々、ぼくのかあさんみたいだと思って」

リリスさんは気分を害したように、唸り声を洩らしました。

ヨル「ごめん、冗談」

ヨルはまだ笑っています。

リリス「恋人を愛するなら、本気になることね。ヨル・ヘイデン。契約のために、ほかの女に身体を捧げようなんて考えずに」

ヨル「ん。……わかった」


ヨルはリリスさんの手を取り、彼女の腕のなかにすべりこんで……


彼女の肩に、トンと顎を載せました。

ヨル「今日はありがとう。……また、来るから」


そうして、ヨルは「ブラッドの料金」と「リリスさんの忠告」を大切に握りしめて帰ってゆき……


リリス「本当にわかっているのかしらね……。あの子は時々、天性のジゴロみたいな面がある」

リリスさんは、誰にともなくぼやきました……。

つづきます!


Thanks to all MOD/CC creators and all builders!

(ポーズは自作です……。またSS10~11枚目の「ふたりがくっついている」のはポーズではなく、お借りしているMODの行動を使用させて頂きました!)

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